転校生 恋愛小説

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転校生 恋愛小説

高一の春、晴れて華のJKとなった私はロンドンから交換留学を終え日本へと帰ることになった。

継続することも出来るって言われたけど充分学べたし、両親にあんまり迷惑掛けたくなかった私はこっちには思い出なんか無いからと強がってついて行った。

ロンドンを出る空港で、そこまで仲良くなかった子も皆来てくれて「たまには遊びに来てよ」って泣いてくれる子まで居て本当に幸せだったのだと実感した。

日本に帰ってきて迎えてくれる友達も居たし、人見知りはしないほうだから大丈夫。

でも、本当は不安で堪らなかった転校初日。

パパは男子校の教師で寮の管理もあって家を空けるからと私は別の所に居候?として住み、違う高校に通うのだと説明された。

なんと当日に。

不安で不安で堪らないのに親も居なくて、不安がマックスで緊張が止まらなかった初日。>

見えたのは赤色の髪の毛をした学ラン野郎が変梃なアイマスクしてグーグーと鼻ちょうちんを膨らませながら寝てる所で思わず笑みが零れ、思いがけないところで緊張が解れてしまった。

フゥーっと息を吐いて、昨晩練習した自己紹介を笑顔で言う。

言ってる最中はもう何言ってるのか分からないくらいの緊張が再び襲ってきた。

だけど最初の不安と緊張に見舞われてた時よりも全然平気だ。

私はなんとかやりきった自己紹介に拍手してくれる赤髪の人を見て起きてたんだと気づく。

緊張するであろう転校初日の挨拶のその緊張を解くためにあんなお間抜けな事をしてくれたあの人に感謝の気持ちを、と探し始めて早一週間。

転校初日のあの日以来赤髪のあの人には会うことが叶わず、あの自己紹介のお陰で友人も無事出来、更に感謝を言いたいのだけど。

ええい、ここは聞いてみよう。

「あのさ「そういえば赤井智!あいつもう来ないのかなあ」

食い気味に被せられた言葉にほかの友人達はうんうんと意見に賛同する。

「もしかしてそれって赤髪の人?」

私がそう質問すると友人達はその赤髪の人の事を色々教えてくれた。

「あいつは要注意人物だよ!中学の頃ここの高校の付属中学に転校してきて初日で暴力沙汰の事件を起こして停学、高校に入学するまでに4回事件を起こしてて、中学だから退学にはならないものの手のつけられない所謂荒くれ者で入学してから私が来た日次の日に停学になったらしいよ?まあ、あくまで噂なんだけど。でもやばいでしょ?!一見可愛い顔してっからみんな騙されんだけど、裏の顔は裏ボス?みたいな」

そう言ってたけれど私はその噂をイマイチ信じられなかった。

だって、私がロンドンに留学した本当の理由は小学生ならではの''いじめ''だった。

最初はやっかみや弄りだけだったけどすぐに変な噂が広まった。

『アイツは男好き』

その噂が瞬く間に広まり、クラスで孤立。

物を隠され、体操着は破かれ靴は給食の残りのシチューで汚され、女子達は陰口と陰湿な暴力、男子達はそんな女子が怖くて何も言わない傍観者で、私は毎日見えない部分にあざが沢山あった。

その内、学校に行く足取りは重くなり全く行かなくなると家に投石などの嫌がらせをされ、私の心は引きちぎれた。

私は面白半分で噂をいった男子達に、殺されたのだ。

だから、噂なんか信じられなかった。

そんなに辛い時、信じて欲しかった小さい私が信じようとする心を邪魔したからだ。

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帰り道、夕暮れ沈みオレンジ色に染まるコンクリートの道はやけにロマンチックで何だか赤髪の人に会える気がして浮き足立った。

真っすぐ進んで公園を右に曲がったところの家が私の居候先。とはいえいつも居候先のお兄さんは仕事が忙しくて家ではひとりぼっちだけど。

私が公園に着こうとした時、
キコキコ。

ブランコを漕ぐような音が聞こえて立ち止まる。

「…、ぁ…て…」

誰かの話し声のような言葉の端々が聞こえて耳を済ませると、

「母さんは安心していいよ、俺最近調子いいんだ。投薬変えたのがよかったみたいで」

笑った声で楽しそうに話すその人はお母さん?らしき電話先の人に近況を報告していた。

盗み聞きは良くないって分かってるけど、どうしても聞きたくなっちゃって、今日だけは許して神様と手を合わせながら息を殺し聞く。

今どき珍しいガラパゴス型なのかパタンと閉じる音がして電話を切ったのがわかる。

緊張の糸が切れた感じで私はバランスを崩して思いっきり転けてしまう。

「!転校生、盗み聞きかよ」

ばっちり目が合うと赤髪の人は私を起こしてベンチに座らせると慣れた手つきで手早くささっと転けた時に出来た私の傷の手当をしてくれた。

「ありがとう、あの色々ありがとう。あなたのおかげで私友達が出来たから」

ありがとう一度言ったらなんか箍が外れたようにありがとうが口から漏れてて、赤髪の人は照れながらもう言わなくていいからと私の口を抑える。

「俺赤井智、転校生のなにちゃんだっけ」

「篠宮冬っていいます」

そっか冬ちゃんかなんて笑うこの人がそんな噂を流される訳が知りたくて嘘が咄嗟に出そうになった。だけど、嘘じゃ本当のことは言ってくれない気がしてなんで知りたいかも、なにもかも全部言ったら赤井くんはあはははと笑ってそっかと言うと少しずつ本当のことを教えてくれた。

「俺昔から体が弱くて、母親からの遺伝なんだけど。それで体の弱い俺を見限った父親が出てって、養育費貰ってたんだけど最近はもう無いし、母親の病気は悪化するしでお金が欲しくてね。この学校基本バイト禁止なんだけど内緒でやったら何度も注意されちゃって、停学。この間もホストで働いてるのがバレて停学になっちゃって。おかげで家賃滞納で俺の住んでるアパート解約させられて荷物だけにされるし、元から少なかったけど。それで、停学くらいまくってて」

「じゃあその髪の毛はホストだから?」

「ううん、新薬の投与してるから髪の色素やらなにやらが変わっちゃって真っ赤になっただけなんだ。不良と思われて仕方ないんだけど」

格好良いでしょ?なんて笑って髪の毛を見せる彼は本当に綺麗な顔をしていて思わず見惚れていると彼は私にその顔を近づけて「冬ちゃんお願い!俺を一晩泊めて下さい!」

うち下宿だからダメだって言いたかったけど、幸い今日は誰もいない。だけどこの事が分かったらパパに連絡されてしまう。

そうしたら私だって転校とか言われるかもしれない。うちのパパは意外と厳格だから。でも私の良心はアパート解約させられ帰る実家もなく家がない人をそのまま放っておけるほど悪い性格はしていない。

ダメだよね、なんて半笑いで言う彼につい口は勝手に動いていた。

「いいですよ。バレないように、なら」

だって、私は転校初日この人に救われてるから。

それからオレンジ色から黒へと変わる空の中、少し大きめなボストンバッグくらいの彼の荷物を下宿?というか居候先の私の部屋に内緒で置き、スペース区切りをした。

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「ここから半分は赤井くんが使って下さい。幸いにもここの人は私の部屋には勝手に入らないから。あ!もしその人がいる時はなるだけ静かに!本当はアパートは会社との信用関係を壊さない限り簡単に解約は向こうから出来ないはずなんだけど、その信用関係も一概には壊せないし、家賃そんなに滞納してないんだよね?だったら向こうに落ち度があるんだけど、解約させられてしまった以上仕方ないし、学生だからすぐすぐアパートも借りられないよね。お母さんが入院してる以上保証人居ないし。だからしばらくは居ていいですよ。」

ペラペラと話す私に赤井くんは目を真ん丸にして私にちょっと待ってと考え出した。

「篠宮さん何でそんなに詳しいの?」

「あ、えっとロンドンに行く前日本の法律少し学んでたから?かな。」

「そうなんだ。でもほんとにいいの?俺なんかが」

自信なさげに俯いて重いカバンの持ち手をぎゅっと握りしめる赤井くんの"なんか"って言葉。

きっと、"なんか"と言うまで今まで苦労したんだろうと思った。

だってなかなかこんな綺麗な顔をした人は本心で''なんか"なんて言えないだろうと思うから。

「赤井くんに助けられたからね。初日に、赤井くんのおかげで友達も出来たし。だからお礼と言っては変だけど基本一人だから逆に安心かも」

「ありがとう」

笑った顔があまりに無邪気で私は意図も簡単にコロッと恋に落ちた。

その日から停学中の赤井くんは私の部屋にある六法全書を読み始めたようで、内緒で読んでるみたいだけど本棚の六法全書の年度の順番が変わっているからバレバレでバイトをしていない日は特に本棚の六法全書がぐちゃぐちゃになっている。

年度によって法律どう変わっているのか私が小さい頃気になったことはやはり皆気になるらしい。

停学明けの学校では相変わらず赤井くんの評判は悪い。停学の理由は赤井くんが言わないでと先生に頼み込んでるようだし、相変わらずみんなは噂に流されている。

家では話す私も赤井くんの「学校では無理して話しかけなくていいよ」という言葉に安心して学校では話していない。

家ではどんどん仲良くなる一方、学校では仲が悪くなる。

そんな私も大概クズだ。

みんなには内緒の生活、そんな生活長くは続くはずがなくて。

私達と帰り道が同じ女の子がいるらしくて、笑って話す私たちを見ていたらしく、その翌日から

『篠宮冬は赤井智と同居している。』

『男とふしだら生活』

という噂が流されてしまった。

ヒソヒソが始まり、友達たちも「嘘だよね?」と半信半疑で。

「あの赤井智となんて嘘だよね?怖がってたもんね?冬?」

いじめられるのは怖い。嫌われるのは怖い。

だけど、もう赤井くんの本当のことを知っているのにこれ以上みんなにあの赤井なんて言って欲しくない。

「赤井くんは何も悪いことしてないんだよ。皆噂に流されてるだけじゃん。私は噂なんか信じない。自分の目で見た赤井くんを信じるよ。確かに一緒の家には居るけどふしだらどころか手さえ触れてないし、噂に流されてひそひそ言ってる人達の方がよっぽど怖いと私は思うけど。」

何も言わなくなった友人らに一瞬怖くなって語尾が吃る。

友人が口を開きなにか言おうとした途端赤井くんに腕を引かれて「逃げよう」って。

逃げ走る私に友人のその言葉は聞こえなかった。

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学校出て、赤井くんと初めてあった公園に着くと

「なんであんなこと言ったの?」

赤井くんはぜえぜえ言いながら私に問う。

「なんか赤井くんが誤解されてるのに腹が立って」

「いつもの事だよ、篠宮さんが庇う必要ないのに」

そうだけど、でも

「助けてもらった恩人とも言える人を悪く言われて限界だったから、それに言ったらなんか気持ちよかったからもういいや」

自然と笑えてそりゃいじめられるんじゃないかって怖いけど、でも、いじめられるのが怖くてずっと学校で赤井くんを避けて友人らと笑ってた自分より全然良い。

「篠宮さん、ごめんね。」

謝ることないってと言う私に赤井くんはありがとうと言って私を抱きしめる。

赤井くんの背中に腕を回した時、本当によかったのか少しの不安が過ぎったけど半泣きの赤井くんを見て、強くなろうと思った。

翌日、やっぱり私の居場所は無くなっていた。

今まで仲良くしてた女子達は「うざー」と急に態度を変え、私の席が廊下の外へずらされていた。

赤井くんから噂の対象は私へ、標的を変え言いたい放題。

だけど赤井くんは私のように近寄ってくるその人達とは関わらず私と一緒に居てくれた。

それから何ヶ月、人の噂も七十五日というように私の噂はどこかへ行って今までとは違う背伸びしない友達が出来て、学校でも赤井くんと話せるようになって本当に楽しい日々を送ることが出来た。

赤井くんと一緒にいるうちにいつのまにか友達以上の仲の良さになって、私達は色々あったけど無事高校を卒業することが出来た。

赤井くんはバイトを相変わらずし続けていたけど、校則をよく読んだら''バイトはやむを得ない場合申請すれば出来る''とのことで1年の冬からは校則違反をしなくて済んだ。

二年の春、赤井くんは正式にうちに来た。

アパートは契約できないし、親に心配かけたくないと下宿できる場所を探してる時にここの人にうちに来る?なんて軽く誘われたらしく晴れてコソコソすることなく二人で学校に登下校できるようになり、高校三年の夏、晴れてアパートに賃貸契約を結べた赤井くんは下宿?居候?先を出ていった。

それからは私も勉強に必死であまり赤井くんとは話すことがなく、高校を卒業してすぐ資格を取ることに成功して奇跡的に大学へ行かずに行政書士として働けることになった。

行政書士として初めて職場に行く今日、職場の方々に紹介してくださる先輩が同期が遅刻していると教えてくれた。

よりによって初日に遅刻してくるやつがいるとは。

思い返せば高校も初日からパパと暮らさないと急に告げられたなぁと思い出に浸っていると、「すみません」と言って来たのは赤い髪の

「赤井くん?!」

「篠宮さん?!なんでここに」

それはこっちのセリフだという前に担当の人にほら早くと急かされながら初の職場へ。

「今日からこちらで行政書士として働かせていただく篠宮冬です!よろしくお願いします!」

私に続いて赤井くんも「同じく今日からこちらで行政書士補助者として働かせていただきます、赤井智です。訳あって変な色の髪ですが、よろしくお願いします。」

と初めて声を張っている姿を見れた。

だけど赤井くんの手が震えてることに気づいて私は少し笑ってしまった。

だって、私が高校の初日に緊張を解してくれた本人が自己紹介で凄く緊張しているから。

笑う私に赤井くんは笑うことないだろと少し怒る。

なんだか拍子抜けの初日だけど、これからまた二人で楽しくやっていけそうだ。

そう考えていた私に資格を取ったから結婚しようと言う赤井くんを見るのはこれから二年後の話。

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