訳あり喫茶店 恋愛小説

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訳あり喫茶店 恋愛小説

お母さんは時々幼い私を家において出かけて行った。その意味をはっきり知ったのは小学校高学年になってから。

お父さんは温厚な人でめったに怒ったところは見たところはなかった。

12歳の誕生日、お母さんは帰ってこなかった。

お父さんは“ごめんなっ”と言ってケーキを買ってくれてプレゼントも買ってくれた。

二人で過ごした。

不思議と寂しいと感じなかった。私は一人じゃないから。

でもお母さんは他の男の人を選んだ。私達家族を捨てた。

私が中学生になったとき離婚した。

(作元柚未)「お父さん、お弁当忘れてる」

(父)「おっと、危ない危ない。ありがとう、じゃぁ行ってくるよ」

作元柚未 22歳 無職。半年前まで働いていたけれど職場のパワハラとノルマについていけず気づばうつ病になっていた。仕事ができない状態までひどくなり辞めるはめになった。今は通院と家事をしている。

…あ、冷蔵庫に何もなかったんだった。買い物…。うつになって最初の一ヶ月は家から出られなかったけれど、今はだいぶ良くなって買い物くらいは行けるようになった。

半年間延びっぱなしの髪を手ぐしでとかし後ろに束ね直す。スーパー今なら空いてるかな。

サンダルに足を通す。日差しが熱い。Tシャツが肌に貼り付く。早くスーパーに入って涼みたい。

家から歩いて約10分。この時期は長く感じる。すたすたと歩く。

あ…。花屋さん。通勤、退社の時にいつも通っていた道。ここの花屋さん珍しい花もおいている。ゆっくりみることがなかったからこうして余裕が出来て気づくことが増えた。

今月お父さんの誕生日。今、私は働いていないから高いものは買えない。

花…。花をプレゼントしようかな。飾れるし。先に買い物すませてからのほうがいいよね。

ちょっと早いけど今日お祝いしよう。

スーパーに着いて、予算を考えながら買い物を済ませ、花屋さんに寄った。

(北見伸)「いっらしゃいませー」

やっぱり珍しい花も沢山ある。迷う。

(北見伸)「お友だちにですか?」

(作元柚未)「いえ、家族に…」

そう言うと彼はにっこり微笑んで

(北見伸)「素敵だと思います!もしよろしければお花選びお手伝いしましょうか?」

(作元柚未)「あ、お願いします。詳しくなくて…」

(北見伸)「実はここにあるの僕の好みの花がほとんどなんです。だから、ぴんとこない名前が多いんですよね」

(作元柚未)「そうなんですね、でもきれいなお花ばかりですね」

(北見伸)「はは、ありがとうございます!」

お父さん以外の人とこうやって話すの久しぶりだ。

(作元柚未)「実は父にあげようと思って。今月誕生日なんです」

(北見伸)「そうなんですね!じゃぁ…これと。これ。…こんな感じはどうですか?」

ごづごづした大きな手が手慣れた様子でお花を選んでいった。

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(作元柚未)「綺麗…」

(北見伸)「可愛い過ぎず色合いを重視してみました。」

何歳だろう。笑った感じとか喋り方とか私より年下のような気もする。

(作元柚未)「これでお願いします」

少し間があってから

(北見伸)「あの、間違ってたらすみません。よくここ通ってましたよね?」

(作元柚)「あ、はい。仕事で」

(北見伸)「やっぱり!雰囲気変わってたから間違ってたらどうしようかと思っちゃっいました」

そう言って笑う彼に悪気はない。

”雰囲気が変わった”=“仕事ができない人間になった”

私にはそういわれてる気になる。

(作元柚未)「仕事辞めたのでスーパーに買い物行くときぐらいしかここ通らないんです。」

(北見伸)「そうだったんですか…あ、もしかして仕事とか探してますか?パートとか」

(作元柚未)「あ…いえ、今は探してないです」

(北見伸)「そうですか…あの!週に3、4日でいいのでパートできないですか?実は近くの喫茶店で僕の知り合いが働いているんですが人手が足りないらしくて。店の中見るだけでもダメですか?」

頭を傾けて手を合わせ私を見つめる男の人。

確かにいつまでもだらだらと家の中で過ごす生活を送るわけにも行かない。

(作元柚未)「分かりました。見るだけなら」

(北見伸)「ほんとですか?!ちょっと待ってて下さい!すぐ準備するので!」

彼は、ばたばたと奥の方へと消えていった。

少しして

(北見伸)「お待たせしました!行きましょう!」

ダメージジーンズにグレーのTシャツに黒のベスト。…お洒落。

(北見伸)「ん?どうかしました?」

(作元柚)「あ、いえ何でもないです。」

凝視してしまった。

周りの目が気になる。彼を見ている。それだけ彼は惹き付けられる何かをもっているのだと思う。隣で歩いていて緊張する。

“グラージュ”の看板の前で足を止めた。

(北見伸)「ここです。入りましょう!」

私の手を握った。大きい手が私の手を包んだ。どうしよう…振り払ったら失礼な気がした。

カラン

(北見伸)「堅斗さん!」

(高里堅斗)「伸、いらっしゃい。」

伸…伸くんって言うんだ…。

(北見伸)「堅斗さん!探してた人見つけましたよ!」

探してた人?

(高里堅斗)「作元さん?」

(作元柚未)「え…?」

なんで私の名前知ってるの?

(高里堅斗)「やっとまた会えた。この日を待ってたよ」

私はこのときすでに新たな生活に足を踏み入れていたことに気づいていなかった。

(作元柚未)「また?」

彼から返事は帰ってこなかった。

(北見伸)「…やっぱり働く気ないですか?」

(作元柚未)「…私働ける自信ないんです。」

(北見伸)「え?」

(高里堅斗)「慣れるまで人前にでないでいいよ。だから試しに働いてみない?」

黒ぶちメガネに茶髪の外はねパーマ。スラッとした体型で落ち着いた感じの男の人。

私はこの人を知ってる?

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(作元柚未)「…1日考えさせてください。家族に相談します」

(高里堅斗)「うん、わかった。明日また来て。待ってるから。」

(作元柚未)「はい」

軽く頭を下げお店を出た。

(北見伸)「じゃぁ僕、家まで送りますね!」

(作元柚未)「あ、大丈夫です。一人で帰れます。」

(北見伸)「ストーカーみたいな真似は絶対しないので!ね?送らせてください!」

(作元柚未)「えっと、じゃぁお願いします」

(北見伸)「はい!あ、名前…」

(作元柚未)「作元柚未です」

(北見伸)「柚未さん!そう呼んで良いですか?僕、北見伸っていいます!好きに呼んでください!」

(作元柚未)「はい、私も…伸くんって呼んで良いですか?」

(北見伸)「もちろんです!この時間涼しくて散歩にはちょうどいいですね!」

いつの間にかだいぶ時間が経っていた。

(作元柚未)「そうですね、ふふ。こんなふうにゆっくり歩くのなんだか新鮮です。」

(北見伸)「…柚未さん!ずっと笑っていてください!特に堅斗さんのまえで!」

堅斗さん?

(作元柚未)「私、何か変な笑い方してました?」

(北見伸)「逆です!ぎゃく!素敵でした!」

突然ぎゅっと手を握りしめられる。

(作元柚未)「伸くん落ち着いて下さい。…私訳あってしばらく笑えなかったんです。…だから笑わせてくれてありがとう。あと、手放してくれますか?」

(北見伸)「あ!すみません!つい、可愛くて…」

可愛い?

(作元柚未)「あ、家ここです。このマンションに住んでます。送ってくれてありがとうございました。じゃぁ…」

(北見伸)「あ、はい!お父さん花喜ぶといいですね!それじゃぁまた!」

“また”

この言葉はたいして気にしていなかったけれどまたやって来ることになる。

いつもより豪華な夕飯を作りお父さんの帰りを待った。

花は花瓶に移し、一旦私の部屋においた。いつもの時間にお父さんは帰ってきた。

(父)「なんだ?今日は豪華だな」

(作元柚未)「ちょっと早いけどお父さんの誕生日のお祝い。ちょっと待ってて」

部屋から花瓶をもってリビングに戻った。

(作元柚未)「はい、プレゼント。今働いていないから去年みたいに腕時計とかプレゼントできなくてごめんね」

(父)「充分だよ。綺麗な花だな」

そう言ってにっこり笑うお父さんは優しい。お父さんは本当にいつも優しい人だ。私が会社を辞めたときも

(父)「柚未が決めたことを父さんはとやかく言わないよ。辛いのに無理に仕事をする必要はない。落ち着いたときにまた考えればいいさ」

そう言ってくれた。でもお父さんももう若くない。いつまでも甘えてはいけない。

(作元柚未)「私そろそろアルバイトでもしようかな」

(父)「そうか!でも無理はせずに自分のペースで頑張ってみなさい」

嬉しそうなお父さん。ふさぎこんでた私を見ていたから余計にバイトしようとしてるのが嬉しいのかもしれない。

この日お腹いっぱい料理を食べてお父さんと笑った。

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翌朝

(作元柚未)「行ってらっしゃい」

(父)「行ってくるよ」

いつものようにお弁当を渡す。あ、喫茶店何時に行こう…。

ソファに腰かけたとき。ピンポーン

インターホンが鳴った。

(作元柚未)「はい」

(北見伸)「柚未さんいますか!」

え、

(作元柚未)「伸くん?」

(北見伸)「迎えに来ちゃいました!」

インターホンのカメラに伸くんが映っていた。慌てて部屋の中へ入れた。

(作元柚未)「準備するので少し待っててもらえますか?」

(北見伸)「はい!何時間でも待ちます!」

(作元柚未)「ふふ、そんなにかからないですよ」

彼は昨日と変わらない笑顔を私に向けた。リビングに珈琲とお菓子をテーブルに置いて伸くんを待たせ、私は自分の部屋で支度を始めた。軽くメイクも。

10分で支度をすませた。

(作元柚未)「お待たせしてすみません。終わりました。」

(北見伸)「全然まってませ…」

伸くんが私を見て目を見開いて硬直した。

(作元柚未)「伸くん?」

(北見伸)「…あ、メイクしたんですね!とても綺麗でビックリしました!…あのころを思い出しました」

(作元柚未)「え?」

あの頃?

(北見伸)「さ!行きましょう!」

話を流されてしまった。

マンションを出て、二人で喫茶店に向かって歩いた。

(北見伸)「働くか決めたんですか?」

(作元柚未)「はい、働いてみようかなと」

(北見伸)「そうなんですね!堅斗さんもきっと喜びます!僕も嬉しいです!近くだから様子見に行けますし!」

(作元柚未)「堅斗さんって人、私のこと知ってたみたいでしたけど…」

(北見伸)「えっと、詳しいことは僕の口からは言えないですけどストーカーではないですから!安心してください!」

そう言ってぎゅっと私の両手を包むように握りしめた。

(作元柚未)「わ、わかりました。だから落ち着いて下さい。」

(北見伸)「あ、すみません!」

ぱっと手を放した。

(作元柚未)「ふふ、伸くん見てて飽きない。可愛い弟ができたみたい。」

(北見伸)「僕だって一応男ですよ?可愛いは嬉しくないです。」

すねてる顔がまた可愛い。

(作元柚未)「ふふ、ごめんなさい」

(北見伸)「もう!まだ笑ってるー!」

何気ない会話をしていたらあっという間に目的地に着いた。

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喫茶店

カラン

(北見伸)「堅斗さん!柚未さん連れてきました!」

(高里堅斗)「伸、おはよう。作元さんも」

(作元柚未)「おはようございます…あの、ここで働かせてください。」

(高里堅斗)「うん、よろしく。昨日も話したけど初めは中の仕事してもらうよ。洗い物とか掃除とか」

(作元柚未)「はい」

真っ直ぐな瞳。私は彼を知ってる?でもこの喫茶店は昨日初めて入った。

(高里堅斗)「そんなに見つめられたら対応に困るよ」

気がつけばじっと堅斗さんを見つめていた。

(作元柚未)「す、すみません!」

変な人に思われたかもしれない。

(高里堅斗)「伸、今日休みでしょ、珈琲でも飲んでいって」

(北見伸)「やったー!堅斗さんの入れる珈琲美味しいんですよねー」

堅斗さんが下の棚から珈琲豆を取り出そうとしたとき、ふわっと髪が揺れた。

(高里堅斗)「紙延びてきたな…邪魔くさい」

ちかくにあった輪ゴムを手に取り髪を束ねようとした。

(作元柚未)「あ!待ってください、輪ゴムだと髪絡まっちゃいます。私ヘアゴム持ってます。」

鞄からポーチを取りだし中からヘアゴムをだし彼に手渡した。

(高里堅斗)「ありがとう」

伸くんみたいにはっきりではないけれど目を細めて微笑んだ。その仕草に私は一瞬胸が苦しくなって茶色の髪を後ろに束ねた彼の首筋が女性とは違い太くて男らしさを感じた。

(高里堅斗)「作元さん早速なんだけどここにあるの洗ってくれるかな」

(作元柚未)「あ、はい」

(北見伸)「下の名前で呼ばないんですか?せっかく可愛い名前なのに」

(高里堅斗)「…柚未さん」

(作元柚未)「はい」

(北見伸)「うん、そのほうほうが絶対いいです!」

堅斗さんが人さし指で眼鏡を押し上げた。眼鏡の奥の瞳が揺れているように見えた。照れているような、そんな仕草。

カラン

(高里堅斗)「いらっしゃいませ」

(小境正樹)「珈琲1つ…作元?」

え…声のするほうに顔をあげた。

(作元柚未)「小境さん…」

会社の先輩だった…。

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(小境正樹)「どうして連絡くれなかったんだ」

さらさらの黒髪。クールで…体の関係だった人。私はあるグループのパワハラに押し潰されそうになって彼の優しさに甘えた。だけど全てが嫌になり、会社関係の人との連絡を全て消した。

(作元柚未)「…ごめんなさい」

(高里堅斗)「正樹…ここにはもうこないんじゃなかった?」

堅斗さん、小境さんと知り合い?

(小境正樹)「用事で近くまで来たから寄ったら作元がいた」

小境さんが真っ直ぐな瞳で私をとらえている。

(北見伸)「柚未さん…」

心配そうに私の名前を呼ぶ伸くん。私は動揺しながらも小さく微笑んだ。

大丈夫、小境さんとはもう終わった関係だ。

(作元柚未)「堅斗さん、洗い物終わりました。次何したら良いですか?」

(高里堅斗)「あ、うん、じゃぁそこほうきで掃除お願い」

(作元柚未)「はい」

ほうきを手にとる。

(小境正樹)「いつから働いているんだ」

(作元柚未)「今日からです」

(小境正樹)「そうか…元気にしてたか?」

(作元柚未)「はい、小境さんは元気でしたか?」

(小境正樹)「元気じゃなかった。ずっと連絡待ってた。」

ほうきを持つ手を重ね小境さんの温もりを感じた。

(高里堅斗)「もう正樹のものじゃないよ柚未さんは。だから気安く触らないで」

突き刺さるような冷たい声を彼は小境さんに向けた。

(小境正樹)「作元、俺は終わったとは思ってない。また俺を頼れ」

堅斗さんと反して小境さんは優しい声を私に向けた。

(作元柚未)「私はもう社員ではありません。一人で頑張っていこうと思っています。だから…」

(小境正樹)「俺の女になればいい」

どうして私にこだわるの?

(作元柚未)「ごめんなさい…」

(小境正樹)「どうして」

(作元柚未)「ごめんなさい…」

小境さんは悪くない。でも会社関係の人と関わりたくない。思い出したくない。

(高里堅斗)「営業妨害。帰って」

(小境正樹)「わかった。作元、また来る」

そう言って彼は店を出ていった。

(北見伸)「柚未さん大丈夫ですか?」

顔を覗きこむ伸くん。

(作元柚未)「ありがとう。大丈夫です」

(高里堅斗)「正樹のことは気にしないで。でもここで働きづらくなったら無理強いはしないから」

(作元柚未)「はい」

(北見伸)「僕もひんぱんに様子見に来ます!」

(作元柚未)「ふふ、ありがとうございます」

それから週に5日、5時間。

食器洗い、掃除。

時々様子を見に来る伸くん。

私は笑うことが多くなった。

(高里堅斗)「そろそろ接客してみる?」

(作元柚未)「はい!」

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カラン

(作元柚未)「いらっしゃいませ!」

(北見伸)「こんにちわ!柚未さん接客してるー!」

にっこり笑う伸くん。

(作元柚未)「ふふ、堅斗さんから許可が出たので!」

微笑む私に彼は

(北見伸)「柚未さん本当によく笑うようになりましたよね!素敵です!」

(作元柚未)「大げさですよ」

(高里堅斗)「確かに雰囲気明るくなったよね」

目を細める堅斗さん。

(高里堅斗)「あ、髪跳ねてるよ」

(作元柚未)「え?!ほんとですか?」

手ぐしで後ろで束ね直す。…引っかかる。

(作元柚未)「毛先傷んできた…切ろうかな」

(北見伸)「切るんですか?!カラー?!パーマは?!」

(高里堅斗)「伸、落ち着いて、でも気分転換にいいかもしれないね。明日柚未さん休みだし美容院行ってみたらどうかな」

(作元柚未)「はい」

翌日 美容院

(美容師)「髪型どういたしますか?」

(作元柚未)「え…っと」

ふと頭をよぎったのは隣で珈琲をそそぐ堅斗さんの横顔と私があげたヘアゴムを今でもつけているあの髪型。

カラン

(高里堅斗)「いらっしゃいま…柚未さん?」

(作元柚)「はい、思ってたより早く終わったので寄ってみました。似合ってますか?」

茶髪にパーマ。堅斗さんと同じ髪型にしたのだ。長さは私のほうが少し長め。

(高里堅斗)「うん、とっても似合ってる」

彼は微笑んだ優しい瞳で。

カラン

(北見伸)「こんにちわー!…柚未さん?!」

(作元柚未)「ふふ、こんにちは。伸くん」

堅斗さんが珈琲を入れてくれて伸くんとお喋りをしてから帰宅した。

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翌日の昼

カラン

(作元柚未)「いらっしゃいませ!」

(小境正樹)「作元、何その髪」

(作元柚未)「小境さん…」

(小境正樹)「似合わない!黒く染め直せ!パーマも!」

そう言って髪をわしづかみされた。

(作元柚未)「痛っ」

(高里堅斗)「正樹!」

堅斗さんが小境さんの手首を掴んだ。

(小境正樹)「作元!堅斗が好きなのか!」

(高里堅斗)「俺が勝手に柚未さんを好きなだけだよ」

(小境正樹)「堅斗、いつからだ」

(高里堅斗)「俺がバイトしてたバーで二人がよく飲みに来てた時からだよ。友人だから黙ってたけど今はもういいでしょ。この気持ち彼女に伝えても。」

(作元柚未)「え…」

(高里堅斗)「覚えていなかったのは悲しかったけど柚未さんが一人で何度か飲みに来た時に俺に寂しいって、悲しいって泣いてた…その時俺が支えてあげたい、守ってあげたいって思ったんだ。でも、突然来なくなって…諦めかけたとき再会した。がらにもなく運命だと思ったんだ。」

私働いてたころ辛くていつも泣いてた…。堅斗さんはそれを見てたんだ…。

私は…堅斗さんをよく知らない。何が好きで何が苦手だとか。でも、この髪型にしたのは…彼に近づきたかったから。

(小境正樹)「作元!俺だけを見ろ!俺はずっと…お前だけを…!」

小境さんの瞳が揺れた。こんな彼を始めた見た。いつもクールな彼が取り乱している。

(作元柚未)「小境さん…私が好きですか?」

(小境正樹)「ああ、好きだ」

(作元柚未)「違います。勝手なこと言わないで下さい!小境さんが好きなのは私じゃなく都合のいい女が好きなんです」

(小境正樹)「!違う!」

(作元柚未)「私の悩みに耳を傾けてはくれなかった…私を見てくれなかった証拠です。私達はお互い都合のいいように利用してただけだったのかもしれませんね」

(小境正樹)「作元…」

(作元柚未)「…伸くん」

入り口で彼が立っていた。

(北見伸)「僕は堅斗さんだから身を引いたんです!あのバーに僕もいた!堅斗さんがどんな顔で柚未さんを見てきたかしってる!だから…だから!」

え…。温もりに包まれた。

(小境正樹)「作元から離れろ!」

(北見伸)「嫌だ!ずっと我慢してた…柚未さんは堅斗さんの大切な人だから…でも見てて辛い…」

伸くんは震えていた。捨てられた子犬のように…。

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(高里堅斗)「伸、知ってたよ。柚未さんがここに働くようになってから来る回数が増えてたし、どこか悲しそうに彼女を見つめてたから」

(北見伸)「堅斗さん…」

(小境正樹)「作元は誰にも渡さない!」

ガシャン!皿が割れて破片が飛び散った。私の視界に小境さんが破片を握りしめたのが映った。

危ない!

(作元柚未)「危ない!」

とっさに伸くんの前に出た。右腕に衝撃が走った。

(高里堅)「柚未さん!」

(北見伸)「柚未さん!」

意識が薄れていくなか伸くんを守れたことにほっとした。もとはといえば私と小境さんの関係のせいだから…。

目を覚ましたのは病院だった。

(父)「柚未!大丈夫か?!」

(作元柚未)「お父さん?」

心配そうなお父さんが私の手を握っていた。

(父)「右腕…傷が深くて痺れや後遺症が残るかもしれない」

(作元柚未)「…そっか」

(小境正樹)「作元…」

(作元柚未)「小境さん…」

(小境正樹)「警察に全て話す…すまなかった」

(父)「君がしたことは許されないことだ!私は!…私は許さない!」

おんこうなお父さんが荒々しく声をあげた。

(高里堅斗)「すみません僕たちが居ながら…」

(父)「君達もだ!何故こんなことになった!?君達は女性一人守れないのか!」

(作元柚未)「お父さん!落ち着いて!」

(小境正樹)「本当にすみませんでした」

そう言って深く頭を下げた。

(作元柚未)「小境さん…」

(北見伸)「僕のせいです!柚未さんは僕をかばって…だから!これからは責任もって守っていきます」

(父)「君達とはもう関わらせない!」

(作元柚未)「お父さん!」

(高里堅斗)「彼女は僕たちにとって大切な人です。側にいたいです」

彼は真っ直ぐな瞳をしていた。

(父)「君達は柚未が好きなのか」

(北見伸)「はい!大好きです」

彼も真っ直ぐな瞳

(高里堅斗)「好きです」

(父)「そうか」

(作元柚未)「お父さん…」

(父)「柚未、二人が好きか?」

(作元柚未)「うん大好き」

(父)「…わかった。二人とも私の愛娘泣かしたら許さないからな。柚未、傷のことで先生に話してくるよ」

そう言って背を向けていった。

(北見伸)「今のって…」

(作元柚)「これからもよろしくつってことです。二人とも傷の責任とってくださいね」

そう言って 私は微笑んだ。

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